コスト構造と収益シミュレーション:投資判断の分水嶺は「CAPEX 6万円/kWh」
系統用蓄電池の新設設備費(電池+PCS等)は2024年度に5.4万円/kWhと前年から約13%低下し、工事費1.4万円/kWhと合わせて6.8万円/kWh(前年7.6万円)が目安になりました。一方で系統連系工事費負担金は接続検討回答まで読めず、事業性を左右します。経産省・三菱総研の試算に基づく整理では、投資判断の分水嶺はCAPEX 6万円/kWhで、補助金の獲得可否がIRRを+1〜3pt動かす最大の変数です。本記事ではコスト構造、収益シミュレーションの目安、補助金の位置づけを整理します。
コスト項目別の水準(目安)
新設コストは設備費と工事費に加え、事前に読めない系統側費用と、用地・運営費で構成されます。10MWh級なら本体+工事で約6.8億円のイメージです(系統側費用は別)。

設備費(電池+PCS等):5.4万円/kWh(2024年度、前年6.2万円から約13%低下)
工事費(EPC):1.4万円/kWh(規模・設置条件で変動)。設備費と合わせて7.6万円から6.8万円/kWhへ低下
規模の経済と調達:10MWh未満と50MWh以上で設備費に1.1万円/kWhの差があり、海外Tier1メーカーの直接調達では2〜4万円/kWh水準の事例もあります。
系統連系工事費負担金:接続検討回答まで不明で数千万円規模になることもあります。接続検討費用は約20万円/件です。
用地・運営費:用地賃借は年1,000〜5,000円/㎡が目安で事業期間15〜20年の契約が必要です。運営費(O&M・保険・主任技術者委託・アグリゲーター手数料)は個別見積になります。
- 設備費:5.4万円/kWh(2024年度、前年比約13%低下)
- 工事費(EPC):1.4万円/kWh
- 規模の経済:50MWh以上で設備費▲1.1万円/kWh
- 海外Tier1調達:2〜4万円/kWh水準の事例
- 系統連系工事費負担金:接続検討回答まで不明(数千万円規模も)
- 接続検討費用:約20万円/件
- 用地賃借:年1,000〜5,000円/㎡目安(15〜20年契約)
コスト圧縮の3つのレバー
同じ立地・同じ市場環境でも、次の3つをどこまで効かせられるかで事業性に差が生まれます。
規模
50MWh以上への大型化で設備費は1.1万円/kWh下がります。
調達
海外Tier1メーカーからの直接調達で2〜4万円/kWh水準の事例があり、相見積と仕様の適正化が圧縮の王道です。
補助金
補助率1/3〜2/3を獲得できれば、実質CAPEXを「6万円/kWh」の分水嶺以下に下げられます。
収益シミュレーションの目安(参考値)
以下は前提により変動する参考値であり、投資判断には案件別の時系列運用シミュレーションが必須です。

モデルA(高圧10MWh級・新設):総投資約6.8億円+系統側費用(設備5.4+工事1.4万円/kWh)。補助金1/3を適用した場合のIRRは約9〜10%・投資回収10年前後、補助金なしかつ調整力価格が低迷するシナリオではIRRが一桁前半からマイナスになり得ます。
モデルB(低圧100kWh級):中央シナリオに補助金を組み合わせてIRR約17%の試算例があります。収益本体は2026年4月から参加可能になった需給調整市場で、小口分散・節税ニーズと親和的です。
収益規模の例:5MW級の需給調整市場収入のモデルケースで年間約9,000万円という民間試算がありますが、市場配分・応札戦略・劣化前提で大きく変動します。
投資判断の分水嶺:CAPEX水準別の事業性
経産省・三菱総研の試算に基づく整理では、CAPEXの水準で事業性の見方が3段階に分かれます。
6万円/kWh以下
事業性が広く成立
6〜8万円/kWh
補助金・立地・運用力などの条件次第
8万円/kWh以上
事業性の確保は厳しい
設備費の低下トレンドと補助金の組み合わせで分水嶺を下回れるかが、新設案件の投資判断の核心になります。
補助金:IRRを動かす最大のレバー
国・都の補助は過去最大規模にあり、各種試算では補助金でIRRが+1〜3pt改善します。総事業費15億円級なら5〜7億円(補助率1/2〜2/3適用時)の補助可能性があります。

国(SII)系統用蓄電池等導入支援事業:補助率1/3〜2/3・補助上限最大40億円。令和7年度の実績は採択約363億円・37件と過去最多で、採択は中国エリア10件・九州エリア8件など再エネ余剰地域に集中しました。
東京都 系統用大規模蓄電池導入支援事業:補助率2/3(EVバッテリー再利用は3/4)・上限20億円。先着ではなく採点方式のため申請品質が採否を分けます(令和8年度の受付は9月1日〜30日)。
採択に向けた準備:公募要領の要件充足、審査観点に沿った加点設計、交付申請から実績報告までの一貫した準備が必要で、認定経営革新等支援機関など専門家の関与が有効です。
各制度の最新の公募情報は本サイトの制度ページをご確認ください。
本記事は2026年8月時点の公表データを編集部が整理した情報提供目的の内容であり、特定の投資行動を推奨するものではなく、将来の収益・補助金の採択・市場価格を保証するものではありません。投資判断は案件ごとのデューデリジェンスと時系列シミュレーションに基づき、ご自身の責任で行ってください。
よくある質問
設備費はいくらくらいですか?
2024年度の設備費(電池+PCS等)は5.4万円/kWhで前年から約13%低下、工事費1.4万円/kWhと合わせて6.8万円/kWhが目安です。10MWh級なら本体+工事で約6.8億円のイメージで、系統連系工事費負担金は別途かかります。
補助金でどのくらい事業性が変わりますか?
各種試算では補助金の獲得でIRRが+1〜3pt改善します。高圧10MWh級のモデルでは補助金1/3適用でIRR約9〜10%、補助金なしかつ調整力価格低迷では一桁前半からマイナスになり得るため、採択の成否が投資判断の分岐点です。
利回り表だけで投資判断してよいですか?
いけません。収益は市場配分・応札戦略・エリア別価格・アグリゲーター条件・劣化前提で大きく変動します。案件ごとの時系列運用シミュレーションに基づいて判断するのが鉄則です。
出典:経済産業省 定置用蓄電システム普及拡大検討会(三菱総合研究所試算) ・ SII(環境共創イニシアチブ)系統用蓄電システム等導入支援事業 ・ 東京都 クール・ネット東京 系統用大規模蓄電池導入支援事業 ・ OCCTO(電力広域的運営推進機関)容量市場・長期脱炭素電源オークション約定結果
※ 本記事は公表されている一次情報に基づく一般的な整理です。制度の要件・金額・期限は公募回ごとに変わるため、申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。採択を保証するものではありません。
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公募要領等の一次情報に基づき作成。最終更新:2026/8/22